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2024/01/08Philosophy

現実世界へと踏み出し、もっと大きな動きをデザインしたい。「おもしろそう」を原動力に突き進むEDP graphic worksの2024年

「“デザインを動かす”ことで、“人の心を動かす”」という使命のもと、さまざまな映像やモーショングラフィックデザインに取り組んできた2023年のEDP graphic works(以下、EDP)。展示やイベントなどのあたらしい取り組みを経て、その考え方にも変化の兆しがありました。今回はEDP代表 加藤貴大へのインタビューを通して、2023年の振り返りと2024年の展望をお届けします。

2023年年初の記事で、広告という分野に関して「一瞬で目を引くインパクトを求められることが増えたように感じる」という話をしたのですが、この1年はむしろ逆の流れを感じました。「アイキャッチになるもの」のようなキーワードを聞く機会は減り、本質的な「いいもの」を求める風潮が生まれてきているのではないかと思います。

 

2023年年頭の記事はこちら

https://www.edp.jp/edp-plus/edp2023/

 

これは、即効性やインパクトという点では、YouTubeやSNSなどから生まれるコンテンツの方が強いという事実に向き合わざるをえなくなり、業界全体が「広告に求めるものは何か?」をあらためて考えはじめた、ということなのかもしれません。広告が勝負すべきフィールドは「真摯にメッセージを伝えること」として、少しずつそちらへとシフトして行っているのではないかと感じます。

 

もちろんそこには、日本の経済状況も反映されていると思います。経済が落ち込み、広告にかけられる予算が削減されると、優先度の高い取り組み以外はどうしても削られてしまいます。より堅実な表現が好まれるようになった背景には、そういった事情もあるかもしれません。

 

そのような流れもあってか、VI(ビジュアル・アイデンティティ)やブランドムービーなどの依頼が昨年よりもかなり増えました。クライアントが重きを置くポイントが変化しているのだと思います。自社のホームページやブランディングに投資する動きが加速する中で、映像に対しても「ちゃんとつくろう」と考えていただけるケースが増えているのでしょう。大がかりなリブランディングプロジェクトでなくとも、ブランドムービーの制作が検討されるようになってきた印象があります。

 

それはもしかしたら、クライアント側も映像の使い方が分かってきたということなのかもしれません。ブランドづくりにおいて映像で何ができるのか、モーショングラフィックデザインにはどういう効果があるのか、多くの人がイメージできるようになってきたとも言えるかもしれません。

3EDP2023

キーワード①「アイディア」

思いつきや衝動を起点としたアクションを大切にした1年で、もっとも大きなトピックスとなったのはオフィス移転です。新しいオフィスに求めていたのは、さまざまな人との交流を通じてインスピレーションが生まれる場となること。せっかく場所を借りるのであれば、単なるオフィスに留まらない風通しの良い場所にしたいと考える中で、ギャラリースペース「A New Face」のアイディアが生まれました。

 

このアイディアから生まれたオフィス移転プロジェクトは、参加したい人は誰でも入ってOKというスタンスで進めていきました。理想の空間イメージを描いて共有したり、それを元にみんなで物件を探したり、下見に行ったりと、「おもしろそう」という直感を大切にしながらメンバーが主体となって進めてくれました。

 

アイディア起点で進めているので、現実的な問題が出てくることもありますが、画面の中のデザインを手がけることの多いEDPにとって、このプロジェクトは空間づくりに取り組めるまたとない機会となっています。障壁さえも楽しみながら、2024年は「A New Face」でいろいろなクリエイターの展示やイベントに取り組んでいきたいと考えています。


キーワード②「ならでは感」

EDPは多様なメンバーの集合体であり、彼らが行う多様なデザインから会社のカラーが生まれていると考えています。個性のある人がたくさん集まっていて、彼らがいろいろなものをつくっている、それ自体がクセがあっておもしろいんじゃないかな、と。

 

そのためEDPでは、大きな変化を能動的に起こしていくというより、そのときどきのメンバーの個性の組み合わせによって自ずと変化していくということを大切にしてきました。グラフィック、プログラミング、イラスト……など、クセの種類が増えていって、中にいる人によって会社のカラーも変わり続けるといったスタンスです。

 

2023年はそういった個々の個性をよりプッシュするために、メンバーが「やりたい」と掲げた挑戦をバックアップしたり、「この人にはこういう仕事が合うのでは?」という狙いを持った動きをサポートしたりしてきました。前田光朝さんがイベントのプロデュースを行ったり、映像以外のフィールドで何かできないかと別チームが動いていたりと、おもしろいことが起こるように会社としても支援を始めています。

 

前田光朝さんプロデュースのエキシビション「Photo Exhibition 然」の模様はこちら

https://www.edp.jp/edp-plus/20230927/

キーワード③「衣食住」

EDPに最も求められているのは、やはり「映像をつくること」ですし、それを手離すことはありません。でもモニターの中だけに留まってモーショングラフィックデザインをつくることには、すこしばかり窮屈さを感じはじめている…かもしれません。モーショングラフィックデザインを進化させたいし、EDPのものづくりを進化させたい。今後は「(身体や感情の動きとしての)モーション自体をデザインしていく」という意味での「モーションデザイン」に取り組みたいと考えています。

 

僕自身の考えになりますが、モーションデザインとはモーショングラフィックデザインの上位概念にあたるものです。空間やその中での人の動きなど、動き自体をデザインするモーションデザインの中のいち要素として、モーショングラフィックデザインは存在するのだと考えています。

 

より強く現実世界とつながるモーションデザインに取り組めるように、EDPではまさに今さまざまなアクションを起こしているところです。「衣食住」は、そういった現実との接点となりうるキーワード、というところでしょうか。2024年はさまざまなフィールドで、2023年にまいた種が芽吹いてくるといいなと考えています。

2023EDP

2023年も非常に多くのプロジェクトに関わらせていただきました。詳細はWORKSからご覧頂くとして、特に印象的だったものをご紹介いたします。

作品①「キンチョール」CM「ヤング向け映像」篇

https://www.edp.jp/works/kinchol-tvcm/

奥田祥生さんがCGディレクターを務めました。Midjourneyを使用して生成された画像をベースに、あらたに3DCGをモデリングしてビジュアルを構築し、独特のおもしろさをつくりだしています。

作品②SXSW出展「Phantom Snack」

https://www.edp.jp/works/sxsw-phantom-snack/

SXSW 2023に電通チームが出展した、食べていないのに食べているかのような驚きの咀嚼体験を味わえる作品「Phantom Snack」。モーションデザインとジェネラティブなグラフィック生成の実装を有馬新之介さんが担当しました。

作品③OOAA ブランディングムービー

https://www.edp.jp/works/ooaa-branding-movie/

5つのキーワードとロゴデザインをお預かりし、そこから先は完全にお任せしていただいた案件です。EDPならではの部分を信頼していただき、キーワードの具体と抽象の度合いやバランス、展開の構築、音楽との親和性を生み出す過程など、非常におもしろく取り組むことができました。

作品④TBS「お笑いエスポワール号」オープニング

https://www.edp.jp/works/owarai-espoir/

こちらも非常に「ならでは感」のあるデザインとなっています。伊良皆貴大さんがディレクターを務め、彼の個性がかなり色濃く反映されています。

 

 

2023年、その他にもさまざまな案件に関わらせていただきました。下記リールもぜひご覧ください。

2024年は「フットワークの軽さ」を、これまで以上に大切にしたいと思っています。A New Faceでの取り組みやイベントなどを経験してみて、「やってみよう」という気持ちやある種の無邪気さとでも言うようなものの大切さを強く感じましたし、社会的に見てもそれらがより一層重要になってきているのではないかと思います。

 

人や組織の進化には、「おもしろそう」を原動力として走る力が必要です。いろいろ考えすぎて、できない理由を見つけて止まっていては、成長につながりません。初めて取り組む領域で、「こうした方がいい」というお作法があったとしても、まずはやってみなければ何もわかりません。まさにNikeの「Just Do It!」のようなスタンスを、2024年はより一層意識していきたいと考えています。

 

是非、どんな依頼でも気軽に声をかけていただけたらと思います。これまで通りモーショングラフィックデザインもつくりますし、さまざまなデザインに柔軟に対応できます。映像とは異なる分野など、最近では参加させていただくプロジェクトのフィールドも広がってきました。

 

ギャラリーA New Faceも、是非さまざまな場面で使っていただけたら嬉しいです。A New Faceデザインやアートに限らず、基本的にはどんな分野の展示でもウェルカムです。こだわりは強く持たない無色透明な場所として、皆さんが自分の好きにカスタマイズして、やりたいことを実現できる場所にしていきたいと思います。

 

 

※2023年12月14日(木)にA New Faceにて行われたイベントの様子は、こちらのギャラリーからお楽しみください。

【最新イベントのお知らせ】
2024年1月12日(金)より、A New Faceでイベントの開催が決定しました。AIを利用した新たな表現の可能性を模索する実験的な内容で、株式会社Weさまと共同での開催となります。是非お立ち寄りください。

 

■イベント「AI AI AI AI AI AI AI AI AI AI [AI TEN]  私たちの異常な実験」
・日時:2024年1月12日(金)-18日(土) 各日12-20時
・参加費:無料 ※事前予約不要
・場所:渋谷区神宮前3-1-14 LEREVE1F

・特設サイト:wedp.tokyo

Photo              谷口 大輔

Interview&Text  長島 志歩