映像だからこそできる、社会課題の正しい伝え方
昨今サステナビリティや脱炭素といったキーワードがトレンドの中、ファッション業界でも資源を循環させる取り組みが注目されています。サステナブルなライフスタイルの提案をするブランドO0u(オーゼロユー)は、ブランドに込められた想いを映像によって紡ぎ出しました。「映像だからこそできた表現」について、株式会社アドアーリンクマーケティングディレクター 高橋朗様、営業部長 穂積亜矢子様とEDP担当ディレクター 加藤貴大に伺いました。
循環する社会を目指すライフスタイルブランド
ーO0uのブランドコンセプトについて、教えていただけますか?
株式会社アドアーリンク 高橋 朗様(以下 高橋)
2年ほど前に、サステナビリティを軸にした新しいブランドをつくることになりました。ブランド設立がちょうど新型コロナウイルスの影響が出始めた時期だったので、新たな生活様式にフィットする様な商品や提案をしていこうという発想で構築しています。生活様式が変わり、外出するために着ていた洋服を着る機会が減り、おしゃれをすることと普段着でいることの境目がなくなったというのを感じたのが大きな要因ですね。ブランドの名前を検討した際には、意味がある単語だとどうしても先入観が生まれてしまうので、記号のようなモチーフにしニュートラルな印象になるようにと考えていました。「O」「0」という循環するアルファベットと数字を使い、「すべての境界線をなくす」という意味を込めています。そこに「あなた」という意味の「u(you)」を掛け合わせてブランド名としました。
株式会社アドアーリンク 穂積 亜矢子様(以下 穂積)
サーキュラーエコノミー、いわゆる循環型社会を実現する企業を作るという企業理念のもとアドアーリンクを設立し、その中のライフスタイルブランドとしてO0uを定義しています。O0uは「循環する」「つなぎ目がない」「境界線を超える」をコンセプトに、生活に密着した長く使える洋服であり、ライフスタイルブランドであることを目指しています。
ー「ライフスタイルブランド」として特別に行っていることはありますか?
高橋
サステナブルは洋服に関してのことだけではないと考えています。ECサイトを作った際に、Me & THE EARTHというウェブメディアも同時に立ち上げたのですが、そこではサステナブルを軸として活動される色々な企業、個人の方に取材させていただき記事として公開しています。ライフスタイルブランドとしているのは、「ライフスタイル」が生活雑貨・飲食というカテゴリも包括したそれぞれの人達の生き方を称すると思っていて。ウェブメディアで取材させていただき、様々な価値観のなかでサステナブルをどう実現されているのかをブランドとして広めることを行っています。その中で親和性のある方に出会えば、POPUPストアでプロダクトとしてお取り扱いさせていただくこともしていますね。
課題の提起から解決策の提示まで一貫して見せる
ーブランドを表現するにあたり、どのようなところに課題を感じていましたか?
高橋
クリエイティブ面での課題は、生活様式の変容やサステナブルへの意識の強まりによって生まれた価値観の変化をどう表現するかということでしたね。グラフィックで見せることも考えましたが、「とても大きな社会課題です!」と誇張しすぎてしまうのではないか、と懸念していました。O0uがどのようにサステナブルであるかを正しく伝え、かつファッションの未来も明るく感じるようなものにしたかったので、それを解決できる方法として映像表現にたどり着きました。お客様に難しい課題を提起するのではなく、日々選ぶ洋服の1枚を変えることが、社会や地球にとっての一歩に繋がることを当事者として感じてもらうのが大事だと思っています。
穂積
プロダクトにどれだけ私たちの想いを込めても、それを手にとって見ただけのお客様に伝えることは難しいと悩んでいました。映像だと、パッと見てわかるビジュアルと聞こえてくるコピーが合わさって相乗効果で相手に伝わるので、見る人の情緒に訴えやすいのではと思います。
ー作る過程でのこだわりやEDPへの印象を教えていただけますか?
高橋
他のクリエイティブでも同様ですが、人と人の繋がりやブランドへの共感を大切にしています。そのため、ブランドを立ち上げる段階からチームに参加いただいていた、EDPのプロデューサー高野さんにコンセプトムービーについてご相談をし、加藤さんにディレクションをお願いしました。ブランドに共感をしているチームとコンセプトムービーを作ることができたのが、良い作品ができた大きな要因のように思います。
穂積
ブランドの価値観をよく理解してくださっているので、私たちが良いと考えるナレーターの声色や音楽についても汲み取ってアサインしてくださり、とてもスムーズに進みました。チェックから修正の依頼をする回数も本当に少なかったですよね。加藤さんとのミーティングは全てリモートでしたが毎回話が早く、こちらが思っていることを汲み取って上手く表現してくださるなという印象でした。
高橋
ブランドのローンチと同時に映像を使用をすることは決まっており、スケジュールが限られていたので最初からクオリティの高いキャッチボールができてよかったです。
EDP graphic works 加藤 貴大(以下 加藤)
ブランドのコンセプトやストーリーを伺った際、ニュートラルなものを求めていることを感じました。そのため、デザインも無理に個性をつけたりせず、色数を調整することでできるだけフラットな印象をだせるよう意識し、シンプルに伝えたいことをしっかりと伝えるように心がけました。
サステナブルなブランドであることを表現するため、カットを割らずに服の糸が言葉を紡ぎながら進んでいく、という演出を考えました。一つ一つの映像もコピーに合わせ、冒頭は社会問題を感じるようなもの、後半は未来に向かっていくポジティブな印象の写真を選んでいます。
高橋
コピーについてもこだわっていて、「顧客にとってフレンドリーなブランドであること」と、「服を選ぶことが社会課題に結びついていること」の2つの接合部分をとても気にしました。例えば「1枚の服を着るだけでこの星のためになる」というような、小さな行動が大きな社会課題に繋がるというマッチングに気を使っています。
穂積
否定的な言葉にならないように気をつけた部分もありましたね。コピーライターの山根さんが何パターンか出してくださり、強く否定するような言葉は使わず、「不完全」「不透明」という言い方に決まりました。服を選んで着ることが「未来の一部になる」というエモーショナルで前向きなコピーがとてもブランドにマッチしていると思います。
ーコンセプトムービーを作ってみて、いかがでしたか?
高橋
サイトだけでなく、展示会やfacebookなどのweb広告でも使っています。特にwebでは最後まで視聴してくださる方が多くいらして、そのような方々をブランドのターゲットに設定するなどのトライアルを現在行っています。映像を作る上で大事にしたかったのは、課題の提起と課題の本質、そして解決策の提示を同時に行うことでした。環境負荷が高いことを伝えてもブランドとしての解決策がなければ無責任になってしまいます。コンセプトムービーではコピーで掲げた課題提起・本質・解決策が一連のストーリーとして表現されているので、クオリティの高いものが完成したのではないかと思います。
穂積
ブランドの本質を汲んで作っていただいているので、今後も長く使える映像になりましたね。自分たちで見返した時にも、忘れてはいけないマインドを思い出させてくれるような。
加藤
それは映像だからできたことでもありますよね。文章だけ見るとある程度量があって、これを紙媒体で伝えようとすると「重たいな」と僕は思ってしまいます。文字が多いと読むのが大変になってしまいますし。映像だと、時間軸があるので言葉を分割して伝えたり、ナレーションのテイストや音楽で温度感も伝えられる。自分たちが伝えたい温度感を調整できるのが良さだなと思いますね。
高橋
そうですね。映像でのコミュニケーションの可能性はまだまだいっぱいあると思っています。他のブランドではシーズンビジュアルを映像で見せているところもありますし、そういった新しい方法も上手く取り入れたいと考えています。今後5Gに切り替わることでスマホのCPUに依存しないような大容量の通信ができるようになると、映像の考え方も変わりますよね。今はそのちょうど過渡期で、静的なものが動的なものに変わっていくタイミングです。今後ECやwebでモーショングラフィックデザインが活用されると、UXは格段に上がると思います。全部動いていても、とても革新的で面白いですよね。僕たちも、ユーザーとのインターフェースの仕方にはまだまだ課題があるので、いいものを多くの方に知ってもらうために、これからも映像とその活用方法は考えていきたいと思っています。
サステナビリティという重要な社会課題を、コピー・ナレーション・モーショングラフィックデザインが組み合わせることで共感されるコンセプトムービーに仕上げました。コンセプトをより正しく伝えたい、身近に捉えて欲しいと考えている方、ぜひ映像を活用してみてはいかがでしょうか?
高橋 朗 (たかはし あきら)
株式会社アドアーリンク マーケティングディレクター
サーキュラー事業部長
ADOORLINKの事業通じて、より良い未来と社会の実現を目指しています。「出来る事から始める事、そして続けていく事」を大事にしながら、日々努力して参ります!O0uとのブランドコラボレーションや協業など、お気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。
穂積 亜矢子 (ほずみ あやこ)
株式会社アドアーリンク O0u営業部長
チームのみんなが楽しく元気に働ける環境を作りながら、長く愛されるブランドづくりに日々奮闘しています。
「どんなことも楽しくなければ続かない」
まずは私が、モノ作りも地球環境に思いを馳せることも楽しく続けながら、無理のない新しいふつうを皆さんにお届けしていきます。
O0u公式WEBストア https://o0u.com/
Me & the Earth https://o0u.com/blogs/journal/
株式会社アドアーリンク https://adoorlink.com/
Interviewee 加藤 貴大 (EDP graphic works Co.,Ltd.)
Photo 谷口 大輔
Text 大野 泰輝
柴田 綾乃 (EDP graphic works Co.,Ltd.)