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2022/02/28Solution

動画マニュアルによるユーザーコミュニケーションの最適化

クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供する株式会社SmartHRは、eラーニングコンテンツ「SmartHRスクール」リニューアルの際に、映像を作成しました。映像がどのようなカスタマーサクセスの実現に繋がるのか?株式会社SmartHR コミュニケーションデザイングループデザイナー 宮本 詩織様、カスタマーサクセスグループ 河野 由那様、EDP担当ディレクター 有馬 新之介にインタビューを行いました。

ー今回ご一緒させていただいたプロジェクトは、2019年に開講したSmartHRスクールのリニューアルがきっかけだと思います。そもそも、今回リニューアルすることになった経緯を教えていただけますか?


株式会社SmartHR 河野 由那様(以下河野)

SmartHRスクールは、開講当初、カスタマーサクセスマネージャー(以下、CSM)が使用する、導入の補助的な役割として作られていました。そのため、スクールだけを見て導入を進めていただくことを想定した構成にはなっていませんでした。ただ、その後お客様が増えていくにつれて、コンテンツによるサポートの重要性が高まり、すべてのお客様がスクールを軸にSmartHRの導入を進められるように対応する必要がありました。お客様が導入する最初の段階でスクールを見ることで、SmartHRのサービスやコンセプトについて理解できるような内容にしていかなければ、と思ったのがリニューアルのきっかけですね。


ーなぜ映像でユーザーにアプローチしようと思ったのでしょうか?


株式会社SmartHR 宮本 詩織様(以下宮本)

SmartHRの画面上やヘルプページに「詳細な操作方法や使い方」の説明はありましたが、「プロダクトの仕組みや全体像」については理解していただくことが難しい状態でした。


河野

そうですね。いきなりプロダクトを触り始めても使えるお客様もいらっしゃいますが、SmartHRの仕組みについて理解できていないと設定の段階でつまずきやすく、運用までうまく進まないケースがあるという課題がありました。映像コンテンツを作る前は、CSMがそれぞれお客様に自分の言葉で説明して解決してきました。映像コンテンツを思いつく前に、SmartHRの仕組みを説明するコースをスクール内に作ったのですが、その時に「あぁそう、こういう説明がしたかったんだ」と社内から好評でした。ただ、それはテキストとちょっとした図表を使った資料だったので、「もうちょっと気持ちよく伝えることができるんじゃないかな」と私は思っていて。テキストや図表、イラストでもない、何かうまく説明できる媒体はないかという話を宮本としたところ、映像で表現することになりました。

ーモーショングラフィックデザインで表現することになったのはなぜですか?


宮本

モーショングラフィックデザインを手法として選んだ理由としては、メンテナンスが少なくて良い、長く使えるという点が大きいですね。セールスやマーケティングのメンバーがよく使っている、サービスの概要を紹介する映像では実写を使用したものがありますが、今回の映像はそれに比べるとサービスを使うための実践的な内容のため、プロダクトのUIが主役になるということがわかっていました。SmartHRはプロダクト改善のため、日々デザインや文言のアップデートをしているので、時間経過によって映像と実際のプロダクトの間にギャップがうまれにくく誤解が生じにくいアウトプットにしたかったんです。そう考えたときに、デフォルメ化したイラストが動いているモーショングラフィックデザインだったら適している、という結論に至りました。


河野

以前はプロダクトの画面を収録して音声をのせたチュートリアル動画を作っていたのですが、プロダクトのアップデートに合わせて映像を差し替える運用が厳しくなってきたためにスクールを立ち上げたという経緯があったので、メンテナンスコストは今回の企画でも重視していました。モーショングラフィックデザインは、その点でも魅力的でした。

ー社内で完結するのではなく、外部パートナーとの共創に至った理由は何でしたか?


宮本

社内デザイナーのスキルアップのために映像作りを試行錯誤することもできましたが、実際にどのくらい工数がかかるか確認したく、短いアニメーションを社内で制作しました。その結果、今回のような3分の映像は相当なボリュームだという実感が得られたのと、社内のデザインチームで制作するのは効率がよくないという結論に至りました。新しい領域にチャレンジすることは、メンバーとしてもウェルカムだったのですが、効率やクオリティを考えて外部のクリエイターさんにお願いする方向へ舵を切ることにしました。


河野

また、映像の耐用年数もある程度長い想定だったので、それなりのクオリティはしっかり担保しなきゃいけないと考えていました。私と宮本の2人で考え始めた企画ではあるものの、「これがSmartHRのアニメーションです」とベンチマークにおけるようなクオリティのものにしたいという想いもありましたね。そこから、様々なデザインスタジオへお声掛けする中、EDPさんと出会いました。

ー映像を作るならこんな会社とやりたい、という基準はありましたか?


宮本

外部のパートナーさんと一緒に映像を作る経験がなかったので、まず「どういう流れで映像って作るんだっけ?」というところからスタートしました。我々とチームとして一緒にやってくださる方、というふわっとしたイメージのみだったので、幅広いデザインスタジオにお話を聞きながら検討していきました。


河野

弊社がディレクションの比重を高めに担って進めるタイプや、逆のタイプなど様々な作り方が検討に上がりました。SmartHRの場合社内にデザイナーがいるので、全てパートナーさんにお任せするのではなく、社内のデザイナーと共同して作っていただける会社というのは基準の一つにありましたね。

ーEDPと一緒に仕事をするきっかけ、決め手は何でしたか?


宮本

「ユーザー向けの教材のような映像です」というご説明を有馬さんにさせていただいた時に、その重要性をわかってくださったのはすごく大きかったです。ウェブ広告やTVCMとは異なり目に触れる機会が少ないので、地味に感じてしまう方もいらっしゃると思うんです。


EDP graphic works 有馬 新之介(以下有馬)

私も映像のジャンルとしては幅広くやっていて、説明的な内容のお仕事も経験があります。なので、ユーザーにとって大切なコンテンツであることはスムーズに理解できましたね。逆に言うと、我々の持っている技術をどこで活かせるかというのはいつも考えていて。そういう意味では、今回のような説明的な映像は、モーショングラフィックデザインが十分に力を発揮できるコンテンツだと思っています。わかりやすく伝えるのが自分たちの強みだと思っているので、自分たちの力で伝わりやすくなるものができるのであれば、それは本望ですね。

ー映像の内容についてはどの程度決めていたのでしょうか?


宮本

最初は社内で完結させるつもりで準備をしていたので、EDPさんへお願いした段階では、すでに原稿や映像内で使いたいイラストなどの想定はできていました。


有馬

そうでしたね。最初に、おおよその構成やSmartHRさんの方で作り込まれていたイラストをいただきました。私たちは、「いただいた原稿を効果的に説明するための映像の構成」を考えて作っていきました。また、SmartHRさんのデザイントーンを踏まえた上で、映像の動かし方を何案かご提案させていただきました。その中でも一番SmartHRさんらしいものを選んでいただいています。

  • 初期段階でいただいた資料

ー映像の中でどのようなポイントにこだわりましたか?


有馬

ちょうどこのプロジェクトがスタートした頃は、SmartHRさんらしい表現をするための基準や素材をまとめた「SmartHR Design System」が話題になっていた時期でした。元々、しっかりデザインについて考えられているというイメージは持っていましたが、やっぱりそうなんだと、確信に繋がったところもありました。なので映像においても、SmartHRさんらしさから外れないようにと意識しながら作っていましたね。


宮本

見ていてくださって、ありがとうございます。特に今回の映像はユーザーとプロダクトを結びつけるコミュニケーション手段なので、それを意識してくださるのは大変嬉しいです。

ー映像の反響はいかがでしたか?


河野

社内でもとても評判が良く、「わかりやすいから何か他の用途でも使いたい」と言ってもらえました。スクール内のお客様アンケートでも「こういう映像をもっとたくさん作ってほしい」「すごくわかりやすかった」というコメントをいただいています。

ーEDPと一緒に映像を作ってみて、いかがでしたか?


宮本

作っている最中は、イラスト・ナレーション・モーションなど、複数の要素が複雑に絡み合う映像という媒体で、きちんと表現できているのか。不安要素もありましたが、映像作りの専門家である方と一緒に進められたのは心強かったです。


河野

確かにそうですよね。ナレーション原稿や構成要素といった私たちのメッセージはお渡ししていましたが、メッセージを効果的に伝えるための演出に関しては全てお任せしました。その部分でのハンドリングをお任せできた安心感はとても大きかったです。


有馬

私たちはサービスを理解する上で、何が大切なのかをきちんと考えるようにしています。今回の場合は、お話をいただいた時点で原稿は作ってくださっていたので、原稿にそってイラストと動きを淡々とのせれば映像としては完成します。ですが、見た人にきちんと伝わる映像にするためには、大事なポイントや「ここが誤解されがちだけど、本当はこうなんだよ」というような、映像を作るきっかけとなった本来の目的を汲み取って消化し、映像で表現することが重要だと思っています。そこは打ち合わせの中で逐一確認をさせいただいて、映像に反映しています。


河野

おかげさまで、ユーザーが見た時にスッと理解していただける映像になっていると思いますね。今回のアニメーションが完成したこともあり、導入段階において、CSMがお客様に機能の説明をするというフローをなくすことができました。対面でのコミュニケーションで、機能の説明が必要な場合にはそうした機会もご用意していますが、人と人とのコミュニケーションでしか担えない部分にCSMの時間を割くことができています。それも踏まえ今後も映像の比率は増やしていきたいですね。テキストだけだと説明が難しいものもありますし、もっとクイックに理解したいというお客様もいらっしゃるので、コンテンツの質を保ちながら、お客様に理解していただける映像を発信していければと思っています。

ユーザー向けのeラーニングコンテンツに映像を用いることで、人的負担を軽減し、ユーザーからも好評を得ることができました。ブランドイメージを大切にしながら複雑な仕組みをわかりやすく伝えたい、と考えている方は、ぜひモーショングラフィックデザインを活用してみてはいかがでしょうか。

宮本 詩織(みやもと しおり)

株式会社 SmartHR コミュニケーションデザイングループ デザイナー


デザイン会社、機器メーカーを経て、2020年にSmartHRに入社。ウェブ領域の担当が多め。お客様がサービスを通じてより良い体験を実現できるよう、サービスコミュニケーションに関わるデザインを行っています。

河野 由那(こうの ゆな)

株式会社 SmartHR カスタマーサクセスグループ


広告や住宅の雑誌編集を経て、2020年にSmartHRに入社。カスタマーサクセスグループにて、SmartHRスクールを中心に、お客様を課題解決に導くためのコンテンツの企画・編集・制作を担当しています。 

 

株式会社SmartHR https://smarthr.co.jp/

Interviewee  有馬 新之介 (EDP graphic works Co.,Ltd.)

Text     大野 泰輝、柴田 綾乃 (EDP graphic works Co.,Ltd.)