ユーザーに寄り添いブランドを体現する
「スモールビジネスを、世界の主役に。」 をミッションに掲げサービスの開発及び提供をするfreee株式会社は、2021年6月にブランドコアを公開しました。2018年から、共にモーショングラフィックデザインを使用した映像を作り続けてきた、freee株式会社 ブランドスタジオのクリエイティブディレクター 小川 哲弥様と、EDP担当ディレクター 前田 光朝が、「らしさ」を追求した本質的なブランドづくりについて語ります。
ブランドを育てていく土壌
ーfreeeに参加されるまではどういったことをされてましたか?
freee株式会社 小川 哲弥様(以下小川)
キャリアのスタートは制作会社で、アートディレクターとして雑誌のデザインをしていました。その後、自動車部品メーカーで自社のリブランディングや広告プロモーション制作に携わり、2017年にfreeeに転職しました。
EDP graphic works 前田 光朝(以下前田)
働き方を含めて社会全体が変化していて、企業もそれに合わせ変化を求められている時期だったと思うんですが、やはりその流れに小川さんものりたい!という気持ちが転職のきっかけだったのですか?
小川
そうですね。変化の早い時代におけるブランディングを考えた時に、これから世の中に新しいイノベーションを起こすようなスタートアップであれば、社内外の声をスピード感持って反映しながらブランドをアップデートしていけそうだと思い、採用担当者に話を聞き始めました。その時に出会ったfreeeは、面接が進む中でも面接官の発言ひとつひとつがミッションドリブン(:意思決定が会社のミッションに沿ったものであること)で、カルチャーがしっかり根付いていると感じました。そういった環境ならブランドが自走でき、スタートアップのスピード感を担保しながらブランドを一緒に育てていける土壌なのではないかと思い、freeeにジョインしました。
モーションで使用感を伝える
ーfreeeに入社されてからはどういったお仕事をされてますか?
小川
入社当初は、各部署の制作物のディレクションを行ったり、上場に向けてマーケティングを強化するための映像やwebなどを作っていました。コストを極力抑えながら、マーケティングの効果を最大限にする必要がある一方、ブランディングを考えた際には、中長期的なコミュニケーションとして「ひとつひとつのクラフトにこだわるべき」という思いもあり、葛藤していました。そんな中、コーポレート動画を作った時には、モーションにこだわれるようにと知り合いの監督に相談をしました。監督から紹介いただいた前田さんのクリエイティブを見て、初めて「このレベルなら、他社と差別化をしながら高いクオリティの映像になる」と安心したのを覚えています。
前田
アイコンやイラストをこだわって作っても、映像にすると時間軸がつくのでだいぶ印象が変わりますよね。なので、私自身も動きの緩急や見せる順番を工夫して、訴求したいポイントがしっかりと記憶に残るようなモーションを普段から意識をしています。
小川
その後、投資家向けのプロダクトムービーを作りました。そこでは、freeeのプロダクトの使用感にワクワクして、ただの会計ソフトではない感じを伝える必要がありました。業務アプリケーションをデモムービーで説明しようとすると、プロダクトを使った時の気持ち良さを伝えるのが難しいんですよね。前田さんであれば解決してくれるのではないかという信頼感もあったので、今度は直接ご相談させていただきました。
前田
実際のプロダクトをデフォルメ化した動きをご提案いただいてましたね。映像では、プロダクトのストレスのない操作性によって受けるユーザーの印象をモーションで視覚化しました。
ーそういった中で昨年2021年にブランドコアを新しく発表されましたが、どういった目的があったんですか?
小川
ブランドコアは、表層的なデザインだけでなくあらゆる顧客接点で「freeeらしさ」を体現していけるように作っています。これまでもデザインフィロソフィーはありましたが、より具体的になったことで、あらゆる接点でユーザーやステークホルダーにブランド体験を届けきることができるようになりました。
実際に、2021年6月にブランドコアを発表して以降、各部署のメンバーが自発的にブランドコアを解釈し体現していけるように、ボトムアップ的な自走を促すことで、より強固なブランドにしていくことを目的とした「具現化プロジェクト」と題した取り組みを行っています。その中で生まれた取り組みの一つに、カスタマーサクセス・サポートのチームが行っている「freeemate. Award(フリーメイトアワード)」というものがあり、チーム内でブランドコアを体現したメンバーを表彰し、社員のモチベーションアップに繋げています。今後もさまざまな部署のメンバーの意見も聞きながら、今後もブランドコア自体のアップデートを続けていく必要がありますね。
前田
ブランディングをする側が、時代の変化にも合わせてブランドをアップデートをしていくというマインドセットを持っていることって大事ですね。EDPで作るクリエイティブは基本的にはゴールが設定されていて、完成してからアップデートすることを想定していないんです。なのでクリエイティブの仕方とブランディングの仕方を一緒にしてしまうと、行き詰まってしまうんだと、今のお話聞いて改めて理解しました。
小川
検証を重ねてアップデートをしていくブランディングは、エンジニアリングと似ていると思っていて、個人的には「ブランドエンジニアリング」と名付けています(笑)
ーロゴが刷新されサウンドロゴが新しくできましたが、サウンドロゴはどのように作っていきましたか?
小川
ブランドコアが出来上がった時点で、ロゴの刷新をしてツバメを象徴的で可愛くしたいと考えてました。ロゴの造形はシステマチックに羽ばたかせられるようにと、パートナー企業にお願いしましたが、サウンドロゴは、私たちも具体的なイメージがなく、あらゆる可能性に視野を広げ最終的に掘り下げていくというやり方をしていきましたね。
前田
サウンドロゴのモーションについてご相談いただいた際には、新しいデザインフィロソフィーの4つのキーワードごとに動きをつけてお渡しし、freeeさんのプロジェクトメンバーで揉んでもらうなど、いろんな検証を重ねていきました。試行錯誤をする中で、サウンドロゴのコンセプト「自然体で前向きになったユーザーの、思わず溢れでた感情」が決まっていった過程は、ブランドエンジニアリングという言葉がピッタリですよね。ディスカッション内容は、ドキュメントでオープンにしていただいていたので、それを元に更にEDPのチームでディスカッションが生まれるなど、今振り返るとfreeeさんの影響を受けた作り方をしていたと思います。その結果、私たちも自分ごととして課題に向き合うことができました。freeeさんのお話で今でも強く記憶に残ってるのは、freeeを「魔女の宅急便」に出てくる、主人公を前向きにさせてくれる絵描きの少女のキャラクターに例えた話です。最初は意味がわからず衝撃的で戸惑いもありましたが、よくよく紐解いてみると「freeeさんがお客様との関係性でありたい姿にフィットしてるな」と腹落ち感がありましたね。こういったイメージやアイディアを大切にしたものづくりができたのは、直接ご相談いただいているからこそじゃないかなと思います。
ブランドを強固なものにするストーリーテリング
小川
freeeではそういったブランドのストーリーを大切にしています。今回同様、ストーリーがあることでパートナー企業にもブランドの強さを伝える事ができていると実感しています。サウンドロゴの決め方もそうですが、選択肢から選ぶのではなく、自分で作り上げたものの方が愛着も湧きますし、ストーリーが生まれますよね。freeeのロゴのツバメが生まれた経緯など、freeeのストーリーを今後公開していきたいなと思ってます。
前田
クリエイティブのプロセスを見せていくのは時代の流れでもありますよね。一昔前は、作るプロセスやストーリーは極力見せたくないクリエイターが多かったと思いますが、それらをうまく見せることで出来上がったクリエイティブの重みが伝わるようになりましたね。
小川
情報に簡単にアクセスできる時代になったことで、デザインに興味を持つ人が増えたことも要因なのかもしれないですね。それに伴い、私含めクリエイティブに関わる人々は、グラフィックのアプローチだけでなく、ストーリーテリングなどの”Why”の部分を意識できているかが問われているんだと感じます。
前田
ストーリーテリングから構築していくとすごくスマートですね。そこも含めてクリエイトできるようになりたいなと思います。
アップデートを続ける
ーサウンドロゴの反響はありましたか?
小川
サウンドロゴがブランドサイトや戦略発表会で使用がされるようになった事で、キャラクターがこれまで以上に象徴的なものになり、確実に当初目標としていた「象徴的で可愛くしたい」という点は達成できました。
ー今後も映像を使った取り組みは継続していきますか?
小川
まだ具体的な構想にまで落とし込めていないんですが、今後も社員へのブランドコアの浸透を図るための取り組みに使用していきたいと考えています。ブランドコアがうまく体現された事例ごとにユーザーインタビュー動画を作るなど、社員がブランドコアを体現するモチベーションに繋げることで、さらにブランドが浸透していくというような循環を作っていきたいですね。
前田
ツバメがより象徴的になったことで、できることの幅も広がりましたよね。デザインフィロソフィーのキーワードをもとに作ったサウンドロゴの他のパターンを活かしてみるのも面白いんじゃないかなと思いました。
小川
そうですね。ツバメの飛び方はもちろん、どんな場所で飛んでいるかなどのタッチポイントのデザインも含めて相談していけるといいなと思いました。
共感するクリエイティブパートナー
ーEDPと映像を作ることの印象を教えてください。
小川
前田さんとのといった方がいいかもしれないですが、作っていただくもののクオリティに対して一切の不安はないですね。プロジェクトを進めていく上で幅広い視野で検証を共にしていただけるのはすごい心強く、ブランドコアに共感してくれているクリエイティブパートナーだと感じます。
細部にまでこだわり、共に「freeeらしさ」を追求した事で、アイコニックなクリエイティブを作る事ができました。EDPディレクター前田は、アップデートを続けながらクリエイティブパートナーとして、皆様の抱える課題に寄り添っていきます。
小川 哲弥(おがわ てつや)
freee 株式会社 Brand Studio クリエイティブディレクター
出版系デザインスタジオにてアートディレクター・デザイナーを経験後、デンソーデザイン部にてリブランディング・広告プロモーション制作を経験。 2017年よりfreeeにてクリエイティブディレクターに就任。
プライベートではキャンプブランドを運営中。
freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」 をミッションに掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」の構築を目指してサービスの開発及び提供。
会社名:freee 株式会社
代表者:CEO 佐々木 大輔
コーポレートサイト:https://corp.freee.co.jp/
ブランドサイト:https://brand.freee.co.jp/