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2026/01/05Philosophy

モーショングラフィックデザインの視点が、空間体験を昇華する。モニターを飛び越え挑む、EDP graphic worksの2026年

「“デザインを動かす”ことで、“人の心を動かす”」という使命のもと、さまざまな映像やモーショングラフィックデザインに取り組んでいるEDP graphic works(以下、EDP)。2025年は、前年から取り組んできた「動き」に対する実験的な試みを通じて、今後進むべき道のりを探り、一歩を踏み出した1年でした。代表・加藤貴大へのインタビューを通して、2025年の振り返りと2026年の展望をお届けします。

2025年は、NFTアートプロジェクト「Rights of Motion」や体験型展示「うごきのカタチ」など、1、2年前から取り組んできた試みの中で「これだ」と感じたものに焦点を定め、大きく育て上げた1年でした。特に「うごきのカタチ」は、24年11月のパリでの展示に続いて、25年3月に自社のギャラリー”ANewFace”で凱旋展示を行うなど、僕たちにとっても印象深い取り組みとなりました。

 

凱旋展示を観に来てくださった方から声をかけていただき、6月には「ASIA FASHION FAIR」というアパレル系イベントの会場の一角で作品「うごきのカタチ(ぬの)」を展示しました。特定の業界向けの展示イベントは堅い雰囲気になりがちなため、五感を刺激できるアート性のあるコンテンツを求めていたそうで、そのニーズに「うごきのカタチ」が合致したのです。アパレル系ということで、素材に合わせて動きを組み合わせるなど、展示に際しては演出面でのアレンジを加えたりもしました。

 

このように、僕たちの思いもよらない形で作品に価値を感じていただけるのは、本当にありがたいことです。今後もこうして作品が広がっていくことを期待しています。個人的にはアートとしての発展性も感じていますが、ジャンル問わずさまざまな方に観ていただけると、それだけ可能性が広がるのではないでしょうか。

 

展示を通じてさまざまな方に作品を観ていただいたことで、気づいたことがあります。ひとつは、「この作品の解釈は、観る人に委ねられている」ということ。歌舞伎の関係者の方が観に来られた際に、「動きが歌舞伎の所作に近い」とおっしゃっていて、観る角度が変われば新たな発見があるものだとはっとさせられました。

 

もうひとつ、「やはり動きとは、理屈ではなく直感的に反応してしまう、動物的な感覚の話なのかもしれない」ということも、改めて感じました。そんな動物的な感覚に基づくものを、映画や音楽のようにカルチャーとして楽しみたいという思いのもとに、コンテンツに仕立てあげていく。それが、僕たちにできることなのかもしれません。

2025年はクライアントワークにおいても、さまざまな挑戦がありました。最も大きなトピックスは、空間演出への広がりです。映像をつくるだけでなく、空間全体のディレクションから関わるプロジェクトが増えてきました。

その先がけとも言えるのが、SMK社の100周年プロジェクトです。EDPが担当したのは映像制作のみですが、その映像の構成をもとに、SMK100周年イベントでの展示の設計や動線がつくられるといった広がりがありました。

また、特に大きなプロジェクトとなったのが、Ginza Sony Parkで行われた、メルセデスベンツのブランド・AMGのポップアップイベントです。体験型エキシビジョンとして開催された本イベントに、EDPは「AMGのデザインとは、どういうものか?」を考える段階から参加し、空間をどう見せるべきかを考え、表現へと落とし込んでいきました。

もう一つ、VJアーティストとして参加した音楽ライブのプロジェクトも印象的でした。トラックメイカー・STUTSさんのライブで行われた、MPC(サンプラー、シーケンサー、パッドコントローラーを統合した音楽制作ツール)のスペシャリスト6名を集めたセッションで、カメラの映像にリアルタイムでモーショングラフィックデザインを載せてステージのモニターに投影するという演出を行いました。EDPとして蓄積してきたモーショングラフィックデザインの表現の幅と、担当した有馬さんと佐藤海里さん(from tsuchifumazu)それぞれが持っている音楽への造詣や理解が掛け合わさることで、ライブ空間における映像演出の新たな可能性を提示できたと感じています。

さらに、2025年最大の催しである大阪・関西万博に参加できたことも、大きなトピックです。シグネチャーパビリオン「EARTH MART」内の展示「いのちのショーケース」において、ディレクションとモーショングラフィックデザインを担当しました。

「いのちのショーケース」は、壁一面に広がるモニター上で、私たちが普段食べている食材100種類の年間消費量を映像で見せるという展示です。精肉パックのようなデザインをベースに、ドット状のイラストを用いたモーショングラフィックデザインを制作しました。空間において映像が重要な役割を担うなかで、EDPはディレクションとして映像の演出方針やイラストのテイストを決める段階から関わり、実際のモーショングラフィックデザインの作成まで担当しました。

こういった空間演出領域での経験を重ねる中で、確信したことがあります。それは、モーショングラフィックデザインの視点からアートディレクションやディレクションをできることが、僕たちの強みなのかもしれないということ。そして、特に空間のディレクションにおいては、モーショングラフィックデザインの視点が大いに活きるということを実感しました。

 

たとえばイベントやカンファレンスを開催する場合、「とりあえず大きなモニターを置いて何か流しておこう」となりがちです。でも僕たちなら、そういった空間のつくり方に関しても、モニター以外での見せ方も考慮したうえで、ベストな方法を提案できます。どんなロゴやモーショングラフィックデザインが良いかも、空間を考慮した上で提案できます。参加者はモニターを見に来ているわけではありません。固定観念を打破して、モーショングラフィックデザインの視点から空間のディレクションができると、来場者がより魅力的に感じる場をつくることができると信じています。

 

これまでモーショングラフィックデザインは、さまざまなクリエイティブが決まった後に動き出すケースが多かったため、つくり手としては時にちぐはぐさに歯がゆい思いを感じることもありました。企画の早い段階から相談をいただくことが増えてきたおかげで、全体に1本の筋を通しやすくなったのはありがたいですね。EDPの手掛ける領域が広がったからこそ任せていただいている部分もありますし、世の中一般において、モーショングラフィックデザインの存在感が増してきたという背景もあると思います。

 

こういった新しい領域での実績が生まれた背景として、『おもしろいことには積極的に関わっていこう』という社内での意識付けがありました。さまざまな人に会って、一緒にできそうなことをどんどん広げていく。2025年は、そういった動きをマネジメントのメンバーとともに実践してきました。“ANewFace”でのイベントや展示の開催も、つながりが生まれるきっかけとなっています。「まずはやってみよう」とこの1、2年で行ってきた取り組みが、少しずつ実を結んできています。

2026年に最優先で取り組むテーマとなるのは、やはりまずは空間演出でのディレクションの経験を積むことです。僕たちのスキルが活かせる最も近しい領域であり、ジャンプアップが目指せる領域だと考えています。

 

空間をまず初めのジャンプとしたときに、最終到達点となるのは、「モーショングラフィックデザインの会社」から「動きに関するクリエイティブを提供する会社」への転換です。今は映像というデータを提供していますが、「モーショングラフィックデザインをつくる脳みそ」を幅広い領域で提供するようなイメージでしょうか。空間のディレクションを追求することは、その足掛かりになると考えています。

 

この領域に関しては、まずは僕自身が先陣を切って進め、EDPの力を発揮できる可能性や広がりの確証を見定めたうえで、会社全体へと広げていければと思っています。

 

業界の常識や市場の環境は、生成AIの登場によって変わりつつあります。たとえば、依頼をいただくタイミングで、生成AIがつくった参考画像やコンテが用意されているケースが増えてきました。ただし制作の際の参考になる反面、イメージが強く固定されてしまい引っ張られてしまうなど、つくり手としては一長一短を感じています。EDPとしては、ガイドとして使ったり、時短につなげるために活用するケースはありますが、アウトプットそのものとしてAIを使う想定は現状ではありません。

 

また今後生成AIによって、プロに頼まなくてもモーショングラフィックデザインが出力できるようになったとしても、動きやモーショングラフィックデザインについて深く理解している人の視点は、どこまでいっても必要とされるはずです。「このモーションでいいのか?」という最終的な判断は、僕たちプロが担うべき領域です。テクノロジーが進化するほど、その視点を持っていることがEDPの強みになると考えています。

EDPがこれまでに手掛けてきたモーショングラフィックデザインは、基本的にはパソコンやサイネージなどのモニターの中に存在するものでした。現在はそれを空間など別の媒体・領域へと広げていくことで、「実際に見て、感じて、体験できるモーショングラフィックデザイン」に挑戦しているところです。

 

EDPのクリエイティブを楽しみにしてくださっている方がもしいらっしゃれば、既存のモニターを飛び越えてEDPのクリエイティブを見てもらえるように努力しているところなので、是非楽しみにしていただけたら嬉しいです。”ANewFace”でもさまざまな企画を定期的に開催しているので、是非そこでもいろいろな方と接点をつくり、おもしろい取り組みを増やしていければと考えています。

 

社内のメンバーには、提案力をさらに伸ばしていってほしいと思います。依頼されたものをつくるだけでなく、「こういう方向性もありますよ」「こういう見せ方もできますよ」と積極的に提案できることが、今後さらに重要になっていくはずです。何もモーショングラフィックデザインのバリエーションの提案に留まる必要はなく、「そもそも映像よりも、大きなポスターを貼った方がいいのでは?」など空間としてのあり方から考えて、提案できたらいいですね。モーショングラフィックデザインの会社という枠に縛られない、ある種の無邪気さのような視点も大切にしていければと思います。

Direction

寺西 藍子

Photo

奥田 祥生 (EDP graphic works Co.,Ltd.)

Interview&Text

長島 志歩